タケコプターは、飛べない
街で「ドラえもんのひみつ道具をひとつ挙げよ」と言われたら、おそらく多くの人が、どこでもドアとタケコプターを真っ先に挙げるだろう。
これらの道具は、アニメでも映画でも最も多く登場する道具のひとつであり、ドラえもんを代表するインパクトの強い道具である。
今日は、そんなドラえもんの人気ひみつ道具のひとつ、タケコプターについて検証してみたいと思う。
もしも、実際にタケコプターがこの世の中に存在したら、果たして本当に飛べるのだろうか。
原理はヘリコプター?
まるで、もしもボックスのような導入部になってしまったが、気を取り直してタケコプターに向き合ってみよう。
そもそもタケコプターは、どのような原理で飛んでいるのか。
おそらく、ヘリコプターと同じ原理であろう。
名前もいかにも「竹とんぼ」と「ヘリコプター」を合わせたような名前だ。
しかも、ヘリコプターも竹とんぼも飛ぶ原理は全く一緒だ。
間違いない、タケコプターも同じ原理で飛んでいるはずである。
ヘリコプターは、機体の上部につけられた大きなプロペラが、地面に空気を押し付けることで浮力を得る。
つまり、プロペラの機体からはみ出した部分が、下方向に風を送り込むことで飛んでいるのである。
改めて、タケコプターを見てみよう。
タケコプターは、飛べない
漫画やアニメから想像するに、タケコプターの大きさはせいぜい竹とんぼくらいである。
それを頭の上につけ、プロペラが回転することで浮力を起こし飛んでいるように見える。
しかし、タケコプターのプロペラが起こす風圧はどこに注がれているのだろうか。
そう、頭である。
どこからどう見ても、プロペラの直径は頭の大きさよりも小さい。
これでは、どんなに頑張っても頭に取り付けられたタケコプターは、頭との接触している部分だけを持ち上げようとすると同時に、頭を上方向から押し付けるように風圧をかける。
想像してみよう、のび太はタケコプターをドラえもんから受け取る。
のび太は、タケコプターを頭に乗せ、スイッチを押す。
タケコプターはプロペラを回転させ、接触している頭皮だけを持ち上げるように飛ぼうとするであろう。
しかし、プロペラ自体は頭を上から押さえつけるように風を送るため、のび太が飛ぶことは残念ながら… ない。
体が持ち上がらないことから、タケコプターの回転速度はどんどん上がり、さらに頭を上から押さえつける。
一方、タケコプターが乗っている頭皮の部分はどんどん引っ張り上げられる。
そしてついに、タケコプターは頭の頭皮の一部を引き裂き空高々と飛んでいくだろう… のび太を地上に残して。
のび太は、自分の頭皮の一部をつけたまま飛んでいくタケコプターを下から見上げ、そしてきっと、こう叫ぶだろう。
「ドラえも〜ん!」
ドラえもんは、回転しながら飛ぶ
えい、この際プロペラの大きさは忘れよう。
夢を壊してばかりでは、芸がない。
プロペラは小さいが、実際に飛ぶことができたとしよう!
それでは、ドラえもんやのび太は快適な空の旅を送ることができるであろうか。
残念ながら、そうでもなさそうだ。
先ほど、タケコプターの原理はヘリコプターと同じと考えられると書いた。
ところでヘリコプターにはなぜ、もうひとつ機体の後方に小さなプロペラがついているのか。
これは、ヘリコプター自体がプロペラの回転で一緒に回転することを防ぐためである。
機体の後方につけられた、小さなプロペラがメインのプロペラとは反対方向に回転することで、機体に逆回転する力を加え、機体が回転することを防いでいるのである。
また、今話題のオスプレーなどは、二つのプロペラがそれぞれ逆方向に回転することで機体の回転を防いでいる。
改めて、タケコプターを見てみよう。
プロペラは…残念ながら、ひとつである。
プロペラとともに順回転する力を防ぐ力学は、何もはたらかない。
したがって、ドラえもんは空高く舞い上がったと思ったら、クルクルとスピンし始めるのである。
のび太、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫も、みんなドラえもんと一緒に回転しながら飛ぶのである…
おわりに
今回は「タケコプターでは、飛べない。仮に飛んだとしても、回転しながらである」という、なんとも悲しい結果になってしまったが、この企画はなかなか面白い。
また時々思い出しては、記事にしてみようと思う。
今回の記事は、うつヌケものが中学生の時に読んだ、柳田 理科雄先生の「空想科学読本」を元に書いてみた。
笑う角には、福きたる。
皆さんも是非、一読してみてはいかがか。
うつヌケもの。
*1:空想科学研究所の本