蘇れ、ブラックパール号
うつ病療養時代、今まで生きてきた人生で初めて、一切の妥協もせずに取り組んだことがある。
パイレーツ・オブ・ザ・カリビアンのブラックパール号を完全手作りで再現するということである。
一切、妥協をしない
材料は全て木材。
大好きな楽器もほぼ全て木製。
私は木と相性がいいらしい。
モットーは、世の中に出ているどのキットよりも精巧なブラックパール号の模型を作ること。
ホームセンターへ通いつめ、木製の材料費だけで5万円かかった。
映画を再生しては止め、再生しては止めという作業を繰り返し、いかにリアルに再現するかを追求した。
誰もがあっと驚くそんな船を作りたい。
そのためには、今まで手を出したことのない彫刻の技術も勉強した。
徹底的にリアルにこだわった。
階段にだって手を抜かない。
デッキには大砲。
舵輪だってもちろん備え付けた。
船尾にはおどろおどろしい彫刻。
もちろん、映画のシーンからそのままそっくり真似た。
船の片側は、壁を取り外し内装が見えるようにした。
貨物だって積み込んだ。
もちろん酒だって積み込んだ。
牢獄にだってこだわった。
牢獄にこだわって、船長室にこだわらない理由はない。
ロープの貼り方だって、中世ヨーロッパの帆船の専門書を読んで勉強した。
帆は、風でなびいているように見せるためにギャザーを入れた。
突然の完成
そして完成の時は、突然でやってきた。
手をつけた時にはライフワークになると思っていた。
これから10年、20年かけて完成させる。
そういうつもりでいた。
しかし、蓋を開けてみればたったの半年。
毎日、1日10時間以上、無心で作り続けた。
長いようで短かった。
映画を真似る
合成写真だって撮ってみた。
映画のシーンそっくりに撮ってみようと、明るさやアングルの微調整を繰り替えした。
もちろん海にだって浮かべた。
フォトショップを駆使して、映画宛らの写真を撮ろうとした。
コイツはいま…
こいつは今、私の実家の本棚の上で今日も航海を続けている。
表面も裏面もない。
どちらも表面だ。
ブラックパール号は永遠である。
何度沈まされても、必ず再び浮かび上がる。
そういう人間に、私はなりたい。
うつヌケもの。